これからの小学校英語教育がますます格差を生む?!

仲良しの、英語教師の書いた記事をまるごとシェアします。
大学英語教育から、小学校英語教育にシフトして、現場に立つ彼の話は深い!完全なバイリンガルかつ英語教育の専門家である彼。

その教えを受けられる小学生たちは、やっぱり幸せだと思う。理屈抜きで。あまりに格差が広がると悲しいが、だけど、どうすることもできない。

私にできるのは、自分の回りにいる子、おやこえいごくらぶに通ってくれる子どもたちが、幸せに英語と出会って仲良くしてくれるよう力を尽くすだけ。

以下、シェアになります。

とてもとても長いですが、子供の英語教育、小学校の英語教育に関心のある方は、ぜひとも読んでください。

小学校英語の現況と将来展望に関する小学校英語教育専門家の声

都内のある小学校の学校公開行ってきました。

金土、2日間丸々1時間目から公開されているのですが、土曜の5時間目は「外国語活動」という授業で、その感想を書きます。

外国活動が数年前にこの自治体で始まった当時、担任の先生たちの研修を提供し、少しだけ私も関わったカリキュラムです。

通常、この小学校は外国語活動をする場合に派遣の外国人助手ALTが担任の補助をするのですが、土曜日は来ないらしく、担任の先生一人で授業をやっていました。数分だけ私が「発音のお手本」をお願いされて参加しましたが、全て担任が進めました。

50分の時間の使い方は
1) Hello song + janken
2) 形の名前の復習square, circle, diamondなど
3) How many?の質問の紹介
4) 1~20の数字の練習(私が音源)
5) 数字を聞いて消しゴム早取りゲーム
6) 形サイコロゲームを4人のグループで
7) 出た数の発表
8)数字の復習

とても丁寧に考えられた、流の良い授業です。

良いところ
担任の先生はとても朗らかで、クラスの雰囲気がとても良いです。生徒たちは恵まれているな、と思います。クラスメート全員が一緒に楽しみながら学んでました。それから、生徒の関心を引く仕掛けが上手です。例えば、最初のHow many?の紹介で先生が「あついなぁ」と言って、コートを脱ぐとシャツ一面、そして背中にもPaper circlesが貼ってあって、How many circles?と聞いて生徒が数を当てる場面が面白いです。サイコロゲームの道具もお手製で凝っていました。サイコロゲームの15分間、グループで多いに盛り上がっていて(英語をあまり使ってはいませんでしたが)、楽しそうな英語活動でした。

改善点
普段はALTの先生がいるので、もっと異文化交流や外国語の学習体験として授業の質が高いのかも知れませんが、担任一人でやっている今回だけを見るとやっている事が長期的に見て生徒にとって英語的にプラスなのかどうか判断が難しい面があると思いました。

ALTはお金がかかるので、全国的に「担任一人で」という外国語活動がまだまだ今も今後もケースとして多いと思いますし、担任一人でやる場合はどうすると良いのだろう、と考えるチャンスになりました。

文科省は2020の英語科を「担任主導」でやる事を政策として打ち出しているように思います。英語ができなくても、研修して音声教材を提供して、時にALTが現れれば大丈夫、という方針です。小学校英語学会に私が参加し、「英語専門教員」ではなく、「担任主導」を主な方針にすると聞いた時、それが本当にベストと考えているから、ではなく、きっと人材確保や予算や雇用制度的に英語だけを教える先生を入れる事が困難なのだろう、と推測しました。その真偽は分かりませんが、担任の先生は今後専門外の科目を教えたり、評価したり、という大変な課題が待ち受けているのは間違えありません。

さて、今回の先生の発音や授業で使っている英語の表現は努力していることが見られ、本当に悪くはないです。小学校の先生としてはレベルが高い方と思います。

そうなのですが、six diamondsがシックス ダイアモンズだったり、thirteenがサーティンだったり、13と30のリズム的な違いがなかったりと、生徒の英語の基礎を作って行く大切な時期において理想的なモデルとは言えないinputが50分間つづきました。

上にも書きましたが、この学校は普段はAssistant Language Teacherが外国語活動にいるらしいので、その人がしっかりとしたモデルを提供していればカリキュラムとしての価値は大丈夫だろうと思います。ただ、ALTもいろいろであり、活用方法もいろいろで、team teaching している様子も是非見たいと思います。

ALTがいない場合、初めて生徒たちが聞く英語のモデルはDVD教材やSmart Boardの音源を使うなど、音をどう提供するか気をつけなければいけないと、改めて思わされます。私はお願いされて2回づつ1~20の数字のモデルを発音しましたが、2回ではとても足りず、その後は生徒はずっと担任の発音やクラスメートの発音がinputされています。それでは英語を将来聞き取る時にも日本人英語以外は聞き取りにくいし、自分が話す時も通じない、という可能性が出てきます。せっかく耳や舌が柔軟な小学生を対象にやるなら、圧倒的に発音を大事にしなければ中学から前倒ししてやっている意味はかなり低いのではないでしょうか。場合によってはUnlearning(教え直し)が将来発生するな、と思いながら見ていました。

生徒への指示も日本が多い中、時に使う英語も、Next, you pair OKなど、volunteer, yes, who?など英語の単語を一生懸命並べている状態。英語をビギナーながらに一生懸命使って伝えようとしている姿を生徒に見せる事もある程度価値あると思いますが、生徒が度々聞くClassroom Englishは大切なInputなので担任一人でやるなら、Classroom Englishをしっかり練習し、自信もって発音面でも表現の正確性でも良いモデルを示す必要があると思いました。ここは電子教材に頼るのは難しいので、継続的な研修と練習あるのみかと思いました。

世界には様々な種類の英語があり、日本的な英語もその一つです。実際の運用場面においては発音や文法のあまり細かい事を気にせず堂々とJapanese Englishを話す、という事には賛成です。但し、学ぶ段階では、特に「世界的に通じ易い」英語の習得を目指す事が必要で、良いモデルの継続的input は不可欠です。

2020年には全国的に5・6年で教科化され週2時間も時間割に入り、3・4年でも活動が早期開始される日本の小学校英語、誰がどう教えるかはとても大切で、今後も目が離せません。自治体の準備不足によって間違ってもマイナスになるような授業だけは行われないことを祈りつつ、時間をそれだけかけてやるならそれなりの質を確保するために行う教材開発や研修、そしてALTや英語専門教員の確保はこれからとても大切な作業だな、と改めて感じました。貢献して行きたいと思います。

私も大学英語から小学校英語に転向して5年目、英語教育専門の教員が小学生に対して行う週に50分ほどの授業でも生涯使える英語の基礎の定着の高い効果が出ることが分かっているだけに、全国の公立の小学校でも将来に繋がる高い質の異文化理解と英語と外国語学習術の基礎が提供されると良いな、と思います。

本来、授業は英語を専門とする先生が教えるべきで、全国の自治体でその方向に向かう事を願います。英語力、小学生への教育の力、そして外国語以前の異文化交流の心構えを持っている教員が養成されなければいけません。養成と雇用の制度、良いものが整備される事を期待してます。

担任の先生がやる事が決まっている自治体では、担任の先生もそれなりの研修と教材があれば担任の先生の利点を活かした良い授業がきっと提供できると思うので、大変ながらも頑張って欲しいなと思います。

さ、来年度は私も小学校の教員研修をやる話も出てきているので。。。自分の授業でやっていることをより理論的に整理し、説明できるようにならないと。そして英語教育が専門でない担任の先生たちでも効果的なカリキュラム運営ができような工夫を研究しないと。

と思わされる学校公開でした。ちょっとだけメモ程度に書くつもりのFB記事がえらく長いものになってしまいました。すみません。

追記: 公開授業の先生は普段いるALTの先生がいない中とても一生懸命にやっていて、公開授業は様々点において素晴らしいものでした。改善点には厳しい事も書きましたが、それはあくまで「もし常に英語活動の授業を一人でするなら」という条件つきの意見です。